一日一枚好きな絵を描くことに決めた僕の日々
塔上月扉
【絵を描く、趣味は絵、いろんな絵が描きたい、画材も好きだ】
◆あらすじ
一日一枚好きな絵を描くことに決めた。
もっと上手くなりたいから。好きな画集を一冊買ってきて、全部描き写してみよう。一冊描き終える頃には、同じような絵が描けるようになっているはず。
わくわくしてきた。
週末に画集を買いに街に行ってこよう。
そう思ったのに。
だけどあんまり描いていない。
でも画材は欲しくなるし、いろんな絵を描きたくなる。
よし! 気を取り直して、どんどん絵を描いていくぞ!
でもその前にかっこいい画材を揃えなくちゃね。
この物語は、創作意欲を刺激する、ちょっと切なくて、だけど懲りない僕が絵に取り組む日常です。
◆目次(収録内容)
一日一枚好きな絵を描くことに決めた僕の日々
思いついた日
準備
お手本探し
一日目
二日目
三日目
四日目
五日目
六日目
七日目
十八日目 万年筆
二五日目 万年筆用スケッチブック
二八日目 絵日記
四一日目 見返す
四五日目 筆ペン
五一日目 ノート
五三日目 おみやげ
六二日目 駅やお店や電車内で
七七日目 絵の世界
八五日目 公開
八十七日目 サイン
一二三日目 旅先スケッチ
一三一日目 色鉛筆 水彩色鉛筆
一四五日目 公開は後悔
一五五日目 イーゼル
二三八日目 デジタル絵
三四二日目 タブレット旅行
三八七日目 毎日描いている人たち
四三九日目 小さな絵
四四〇日目 ささやかな願い
四七二日目 ひさしぶりの画材店
五三五日目 練習ばかりではつまらない
六六一日目 極めたいこと
七九八日目 画材たち
八二五日目 自分の絵
◆おおよその文字数
32,700文字
(目次・奥付などを含む)
◆立ち読みコーナー
思いついた日
一日一枚好きな絵を描くことに決めた。
もっと上手くなりたいし、絵もたくさん描きたい。
どうせ絵を描くなら好きな絵が良い。本屋へ行って美術書の棚から、こういう絵を描きたいという人の画集を一冊買ってくるとしよう。一日一枚、真似して描いていったら、一冊描き終える頃には、自分も同じような雰囲気の絵が描けるようになっているだろう。
考えるだけで、わくわくしてきた。
準備
駅前の小さな本屋は品揃えが悪かった。そもそも美術やイラスト関連の棚がない。流行りの絵柄の本が三冊程度しか置いていなかった。かわいいけれど自分の描きたい好みとは、ちょっと違う。
しかたがない。週末に街の大きな本屋へ行くか。それから始めるとしよう。すぐにでも始めたいのにもどかしい。早く絵を描きたい。
お手本探し
表紙の絵に激しく心を揺さぶられる。こんな絵が描けたら楽しいだろうなあ。一冊分、模写すれば近い絵が描けるようになるに違いない。
さっそく買おうと中も見てみる。
あれ? ちょっと表紙と雰囲気が違うぞ。
うーん。後半にいくと、好みじゃない絵ばかりだ。なんていうか表紙と数枚だけで十分なんだけどな。でも本になっているから一冊買わなきゃならない。
むしろ退屈なありきたりの構図とポーズというか。この辺りは真似したくないな。それにキャラクターが自分には現代的過ぎるなぁ。
表紙と数枚の絵のためだけに数千円はもったいない気がしてきたぞ。重い本を持って帰るのも面倒になってきた。
古本か図書館を探してみるか? でも図書館は返却日を気にして焦ると良い絵が描けなくなるし。古本は、ちょうどあれば良いけれど、ないと探して回るのも面倒だ。
どうしようかな。
……。
やっぱりやめておこう。好きなマンガのキャラクターや、自分で映した食べ物の写真から気軽に始めてみよう。
あ、そうだ! 旅行先で買った好きな絵のポストカードも、たくさん箱にしまってあったはず。よく考えたら、こういう絵を描きたいフォルダをパソコンの中に保存していたのを思い出した。保存しているだけで一枚も描いていないままだ。
まずはそれらから描こう。
一日目
描きたい絵、目が惹かれた絵のページを開くと、意外に細かく描き込まれていた。
人物に惹かれていたけれど、よく見たら背景とか小物が細かい。
初日からこんなに細かい背景まで描いていたら、一日一枚なんて時間がたりない。他にもすることがたくさんあるのだから、五分からせいぜい二十分ほどでかけるものじゃないと。
マンガだったら線画だから、服の模様を省略すれば、さらさらと描き写せるはずなんだけどな。
とりあえず描き写してみた絵を原画と並べてみると、同じポーズのはずなのに、かなりバランスが違っている。
うーん、おかしいな。今日は背景とか省略する部分とかに迷って、集中して描けなかったからかな。明日はあらかじめ描く絵を決めて描くことだけに集中しよう。

