アポロンは東を向く
塔上月扉
【恋、愛情、思いやり、BL、寮で同室、留学生】
【内容紹介】
期待に胸を膨らませて大学に入学し、大学寮に入寮するアルフォード。
二人部屋を運良く一人で使えると思っていたら、ギリギリにやってきた留学生のシドと同室になってしまう。
大学ではやりたいことがたくさんあるから、留学生の面倒なんてまっぴらだと素っ気なく接する。
アルフォードに遠慮して、はっきりと物をいわない留学生にいらついてしまう毎日。
だが、留学生に友人ができたり、部屋をたずねてくる学生たちの姿を目にするうちに、次第に気になってくる。
絵が好きだという共通点も見つけた。
今までいらついていた誤解も、一つずつ解けてゆく。
意外と気が合うのかも?
たった一人で異国に勉強をしに来ているのだから、心細いだろう。
せめて俺が面倒を見てやらなきゃな。
そんなふうに思えてくる。
そして自分でも気づかぬまま、次第に心は……。
【立ち込みコーナー】
(本文より一部抜粋)
明日から大学が始まる。
ところが、そんな大学がいよいよ始まろうとする直前に、何と留学生が遅れてやってきたのだ。
ギリギリにやってくる留学生というのは、ままあることだが、そういう場合は寮が埋まっている場合、町で下宿をすることが多い。
けれど今回は、寮に入りたいと留学生が希望した時、二人部屋の半分が空いていたというわけだ。最後の一部屋。つまり俺の部屋の半分だ。
寮生に拒絶はできない。
それは当然だ。
皆が一人部屋を希望するに決まっているからだ。
だが、よりにもよって外国からの留学生とは。こんなことなら、ルームメイトがいた方が良かった。
外国人を差別するつもりはないが、同国人よりも気を使うのは事実だ。
正直にいって、留学生の相手なんて、疲れるだけだ。
第一に言葉がたどたどしいから、いちいち集中して聞いてやるだけでも疲れる。
両親が時々開くパーティの招待客に外国の子供がいると、必ず相手をしなければならなかった。そのたびに、失礼がないように、聞き取りにくい言葉を苦労して聞き取り、通じない言葉や身振で、何とか室内を案内したり、庭を案内したり、大人たちが帰るというまで一緒に遊ぶのが苦痛でしかたがなかった思い出がよみがえる。
兄は外国人に対して、いつも興味津々で楽しんでいたが、自分にとっては気を使うだけで、あまり良い思い出はない。
やはり言葉は聞き取りやすい方が、話をしていて楽だ。
それにルームメートというだけで、勉強の面倒まで見てやらなければならなくなったら、自分の時間が削られてしまう。
冗談ではない。
勉強したいことも、趣味も、交流も、運動も、奉仕活動も、とにかくやりたいことがたくさんあるのだ。
断固、拒否しなくては。
面倒見の良い奴はいくらでもいる。そいつらと勉強したら良いのだ。
性格が良い奴だったとしても、俺は一人の時間を大切にするタイプなのだ。
はぁ。
寮が一人部屋だったら良かったのに。今からでも寮を出て、下宿に入るべきか?
いや、両親が許さないか。二人部屋、三人部屋、四人部屋があるからこそ、両親は寮へ俺を送り込んだのだろうから。
この大学寮には、一人部屋はないのだ。
いや、一部屋だけ最上階に特別室がある。この部屋の真上なのだが。だが、その部屋が使われるのは、外国からの王族などが留学してきた場合のみだ。今年も使われていないらしい。
なるべく面倒見が悪い男を演じることにするか。
友人は大学で作ってもらうことにしよう。

